人の話を聴くときに私が意識していること

人の話を聴くときに私が意識していること
管理人のひとりごと

こんにちは。STOP!ABUSE:管理人の秋好玲那です。

人の話を聴くって、本当にむずかしいですよね。

自分はちゃんと聴いているつもりでも、相手は「聴いてもらえていない」と感じたり、理解したいと思っていても伝わらないこともあります。

また、相手の話を聴いているつもりが、いつの間にか自分の話にすり替えてしまったり、求められていないアドバイスをしてしまうこともあるでしょう。

私も、これまでたくさんの失敗をしてきました。いまでも、「もっとちゃんと聴けばよかった」と後悔することはあります。

そんな中でも、私なりに気をつけていることを、今日はお話ししたいと思います。

人の話を聴くときの重要なポイント

人の話を聴き慣れていない人は、

  • 何を言ったか
  • どんな言い方をしたか

など、表面に囚われがちです。そして、何よりも『自分の価値観で聴く』という無意識のスタンスに気付きません。

たとえば、あなたが友人のだれかに「あなたにとって友だちとはどういう存在ですか?」と問われたら、

  • 責められている
  • 腹を割って話そうとしている
  • 自分を試そうとしている
  • 本音で話し合いたいと思っている
  • 疑われている

など、『なぜその質問をしたのか』の答えを自分の価値観で埋めてしまい、勝手に解釈してしまうことがあるでしょう。

現実には、単純に聞いてみたかっただけかもしれないし、友人自身が『友だちって何だろう』と悩んでいるのかもしれませんよね。

でも、『相手がなぜその質問をしたのか』を自分で埋めてしまうので、問いの本質が見えなくなってしまうことが多くなります。

そうすると、質問の答えがズレたり、答えられなくなったり、誤解を生んだりなど、さまざまな弊害が起きます。

このように、だれかの話をフラットな状態で聴くことは、人間にとって非常にむずかしく、高度なスキルと自己コントロールスキルが求められるということです。

人は『話すこと』のほうが得意

どんなに話下手な人であっても、人は『自分が話すほうが得意』です。

相手と何を話せばいいかわからない、相手の言ったことに何と言えばいいかわからない・・・ということはあっても、

『自分の話をする』

という点においては、人は『話すほうが得意』なのです。たとえば、何を話せばいいかわからない人も、

  • 相手が何を楽しんでくれるのか、わからない
  • 自分の話に対して、相手がどんな反応をするのかが怖い

という『話すこと』自体とは別の要素で悩むだけで、相手が楽しんでくれたり、相手を味方だと思えたら、話すほうがラクです。

中には、『自分の話をするのは好きじゃない』という方もいます。でもそれは、心のバリアが働いているだけで、『話すこと』自体が苦手ではありません。

思ったことを思ったように話せると確信が持てれば、人は、話しているほうがラクなのです。

人は『聴くこと』が苦手

先述したように、人は『話すこと』が得意です。裏を返せば、『聴くこと』が苦手とも言えます。

『聞くこと』は、だれでもできます。なぜなら、『聞く=自然と耳に入ってくる音』だからです。

たとえば、あなたが友人と電話をしているとします。友人は、悩みを打ち明けてくれました。

あなたは、『耳に入ってくる音』に集中しているはずです。だから、聞いていることは間違いありません。きっと、一生懸命『聞いている』でしょう。

でも、『耳に入ってくる音』に集中しているからこそ、

  • どんな言葉を言ったか
  • どんな声色だったか
  • どんな言い方をしたか

に意識が向きすぎて、他の情報を除外してしまいます。つまり、『聴くこと』ができないのです。

『聴くこと』は、トレーニングが必要になります。なぜなら、非言語(言葉にならないもの)を察知する必要があるからです。

たとえば、先に挙げた友人の悩み相談の場合だと、『耳に入ってきた音』以外に、

  • 何を言わなかったか
  • どんな姿勢で話しているか
  • 呼吸状態はどうか
  • 空気感はどうか
  • なぜ、いまその言葉を使ったのか
  • なぜ、この順番で話すのか
  • 何をわかってほしくてこの話をしているのか

などを、通話から『聞こえる音/聞こえない音』を頼りに、頭を動かしながら耳を傾けることになります。

これを長時間続けることは、トレーニングをしていない人にとって、とても苦痛だし、大きな負担です。

トレーニングを積んでいる人であっても、1人の話を『聴く』のは2~3時間が限界、1日に『聴くこと』ができるのは、最大でも10人程度でしょう。

カウンセリングの時間が、平均60分、最大120分で設定してあるのも、それだけ『聴くこと』に限界があるからです。

※それ以上話すと、クライアントが混乱してしまう、という理由もあります。

自己コントロール

人の話を聴いていると、自分自身の心も動きます。感受性が高い人なら、なおさらです。

だからこそ、『人の話をフラットに聴く』ことが、とてもむずかしいのです。

たとえば、だれかが虐待の体験や感情を吐き出したとき、あなたの心も同じような動きをします。

つらい感情を聴いていればあなたもつらくなるし、悲しみの感情を聴いていればあなたも悲しみが生まれます。

それは、あなたの心が弱いのではなく、一般的な心の反応です。繊細さんや感情移入の激しい人なら、相手と同様に、または相手以上に心が動くでしょう。

そのときに、自己コントロールが必要になります。

と言っても、自己コントロールとは、そうした自分の心の反応を『出してはいけない』と否定的に捉えることではありません。相手の話を聴きながら、

  • 自分の心の動きを観察する
  • 自分の受け取り方が歪んでいないかなど、認知や感情を分析する
  • どの感情を出すか、どの感情を横に置くか、判断する
  • 出すと決めた感情を、どう表現するか、考えて判断する

など、『自分の状況を自分でコントロールできている感覚』が自己コントロール感です。

つまり、『人の話をフラットに聴く』ことは、相手の話や感情に振り回されたり、自分の感情をコントロールできず露骨に表出させたりせずに済む状態。

常にフラットな状態を保ちながら、相手の話を聴き続けるようになるには、それなりのトレーニングが必要になります。

そして、何よりも、話を聴く側になる自分自身をサポートしてくれる人の存在が必須です。

 

以上が、私が『人の話を聴くとき』に気をつけていることです。

あなたも、だれかの話を聴くこと、聴いてあげたいと思うことがあるでしょう。その根底には、相手を理解したい気持ちがあるのではないでしょうか。

そのすべてが報われるわけではないし、すべてを理解して受け止めることはできないかもしれません。逆に、受け取ってもらえないこともあるでしょう。

でも、それでも私は、私にかかわる人たちのことを少しでも理解したいし、一緒に泣いたり笑ったりしながら成長していきたい、と強く思います。

そして、20年前から抱いてきたこの思いは、ずっと変わらないのでしょう。

あなたも、だれかの話を聴けるように、そしてだれかにあなた自身の話を聴いてもらえるように、いまある人間関係を大切にしてくださいね。

秋好 玲那

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北九州市在住の被虐待当事者です。 2000年から、少年院やグループホームなどで被虐待者の自立支援及び相談業務を行う傍ら、児童相談所などでの講演活動、大学など...

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