解離性同一性障害の子どもたちとの約束

解離性同一性障害の子どもたちとの約束
DIDな子どもたちの日常

こんにちは。STOP!ABUSE:管理人の秋好玲那です。

虐待を受けた子の育て直し』でお話ししたように、私には解離性同一性障害(多重人格)の2人の養子がいます。

合計すると、約160の人格さんが存在しています。

そんな子どもたちと接する中で、私は5つの約束をしています。この記事では、その約束についてお話ししたいと思います。

誰とでも対等に接する

私がもっとも重視しているのは、どれだけ人格さんが増えようと、どんな人格さんであろうと、全員をひとりの人として、対等に接するという点です。

たとえ、攻撃的な言動をとりがちな人格さんであっても、です。

これまで、彼女(彼)らを取り巻く支援者の多くは、「何人いようと、全部基本人格の一部」として、個別に見ない方針を取っていました。

たしかに、そのとおりです。各人格さんは、基本人格の一部であることには間違いありません。

でも、必要だからその人格さんは存在しているわけで、基本人格から離れて、ひとりの人として生きています。

それをおろそかにすることは、存在の否定につながると思うので、「全員、ひとりの人として見るよ」と約束しました。

また、私の前で基本人格のフリをしたり、個性を押し殺したりしてほしくないという思いもあります。

各人格さんそれぞれにパーソナリティがあるので、せめて私の前では自由でいてほしかったからです。

連帯責任と見なす

解離性同一性障害は、さまざまな記憶、トラウマ、価値観、思考を持った人格さんが存在します。私の子どもたちも例にもれず、多種多様の人格さんがいます。

中には、衝動的に自傷したり、荒れて周囲に攻撃的な言葉を投げたり、嘘をついて人を騙したりする子もいる。それが現実です。

でも、私は「あの人がやったこと、私(俺)には関係ない、は絶対に許さない」と事ある毎に伝えています。なぜなら、仮に私が、

「Aくんがやったことだし、他の子はそんなことするつもりはなかっただろうし、止めたい子もいただろうな」

と理解したとしても、世間は違うからです。

全員が同じように理解してくれるとは限らず、むしろ世間の大多数は「あなた(基本人格)がやったんでしょ」と考えるでしょう。

世間の目とはそういうものだと伝えた上で、

「自分は関係ないは通じない。何か問題が起きたら連帯責任だと全員に共有して、肝に銘じておきなさい」

と言っています。

統合を強要しない

医学的に考えれば、解離性同一性障害の最終形は『統合』です。

すべての人格が統合され、本当の意味でひとりの人として生きられることが望ましいのでしょう。

ただ、20年以上解離性同一性障害を持つ人と接してきた中で、「全員が統合を受け入れられる(目指せる)わけではない」という現実も知っています。

特に、ひとりで生きていく自信がない、怖いと感じている基本人格は、統合という言葉を見聞きしただけで強い嫌悪感や不安を抱きます。

私の子どもたちも、「できればこのまま共存していきたい」と言っています。医学的には、これに同意することは反するのかもしれません。

でも私は、「あなたたちが共存を望む限り、私も共存を目指すよ。みんなで共存していけるようにがんばろう」と言っています。

もしかしたら、彼女(彼)らの治療にとっては、私のスタンスは弊害になるかもしれません。

それでも私が共存に同意できるのは、実際に多くの人格さんたちとともに生きてくのは子どもたち自身だからです。

医学的に統合は正しいかもしれませんが、本人がいま必要としている存在を否定してまで統合させるのが正しいとは、どうしても思えませんでした。

隠し事をしない

子どもたちにとって、私は最初、支援者でした。

当事者として支援活動をする中で出会い、行政機関やケースワーカー、医師、グループホーム、事業所など、彼女(彼)らを取り巻く支援者たちと連携して支援をしてきました。

その中で、私が約束したことは、「支援者間で話したことをオープンにすること」です。なぜなら、子どもたち自身のことだからです。

子どもたちの人生で、その人生を生きているのは子どもたちなのに、自分たちの知らないところでいろんなことが決まって、ただ事後報告で伝えられるなど、私が子どもたちの立場だったら我慢ならないと思いました。

だから、隠さず話し、本人たちの意見を聞き、最大限尊重することに重きを置いてきたのです。

もちろん、その内容が彼女(彼)らにとって負担が大きいと判断されるものであれば、本人たちが受け取れるタイミングを図ります。

でも、最終的には必ず、隠さずに伝えることを徹底しています。

決して離れない

子どもたちは、劣悪な環境で育ったため、とても不安定です。

フラッシュバックして取り乱すこともあるし、だれからも必要とされていない無価値観に苛まれることもあるし、自分は消えてしまったほうがいいと極論に達するときもあります。

その中で、もっとも大きく心を揺さぶるのは「人が離れていってしまうこと」です。つまり、見捨てられ不安が強いのです。

以前は私も見捨てられ不安が強かったので、子どもたちの気持ちはとても理解できます。なので、

「人格さんたちが満場一致で『もういらない』とならない限り、私は絶対に離れない」

と約束しています。たったひとりでも、私を必要としてくれる子(人格さん)がいるなら、私は絶対に離れないよ、と。

姉のほうは、その言葉を信じるまでに数年かかったと思います。妹に関しては、これでもかというくらい、試し行動を取られました。

姉に比べて、妹はまだ私との付き合いが短いので、いまも「絶対に離れないよ」という私の言葉を信じられないでいるでしょう。

彼女(彼)らが生きてきた環境を思えば、それは当然の結果だと思います。

私にできることは、絶対に離れないと伝え続けることと、現実として傍にい続けることくらいしかできませんが、これからも変わらずに続けていこうと決めています。

まとめ

解離性同一性障害の子どもたちに、これら5つの約束をすることで、本当に子どもたちにとってプラスになっているのか、正直言ってわかりません。

ただ、私は子どもたちが安心して過ごせること、子どもたちのペースで成長してくれることを、心から望んでいます。

そのために必要なことは最大限したいし、子どもたちの気持ちを尊重していきたいと思います。

 

秋好 玲那

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北九州市在住の被虐待当事者です。 2000年から、少年院やグループホームなどで被虐待者の自立支援及び相談業務を行う傍ら、児童相談所などでの講演活動、大学など...

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